Update - 1.9.0.107

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"DiscIP.214002.2": "サビ",
"DiscIP.214002.3": "空と花の詩",
"DiscIP.214002.4": "清月二十一日、雨のち晴れ。\r\n「この日を私は記しておかなくてはなりません。星ノ塔に記憶を奪われたときのために……」\r\n\r\nあの時、ナノハは用意周到に逃亡計画を立てた。\r\n朝焼けの時刻に出発し、途中で3回休憩を挟みながら、痕跡を残さぬように注意を払いつつ進んだ。\r\nそれは師匠に弟子入りして以来、最も大胆かつ規律を逸脱した行動だった。\r\nしかし、彼女は日が沈む頃になって、師匠が弟子の家出に気づいていないだけの可能性に思い至る。\r\nそう思ったナノハは、夜遅くにこっそり庭へ戻った。\r\n遠くから師匠の部屋に灯りがついていることを確認して安堵する。\r\n荷物を片付けてから、いつものように就寝の挨拶をしに行った。\r\n気づかれていないのであれば良かったが、そう都合良くはいかない。\r\n「屋敷の外は楽しかったかい?」\r\n突然の言葉に驚いたナノハは、言い訳する余裕もなく頭を下げた。\r\n「ナノハ……お前さんは今日、隠密術の訓練をしてたようだが……ふふ。その程度では、まだまだ修行が足りないね」\r\n師匠に叱られなかったことが、ナノハには信じられなかった。\r\nだが、それで終わりではない。\r\n「けれど、なんにも言わずに姿を消したのはなぜだい?もしアチキが、行先も告げずに姿を消したら、お前さんは……」\r\n\r\nあの夜をどんな気持ちで過ごしていたのか、ナノハはよく思い出せなかった。\r\n「師匠がいなくなってしまうかもしれない」という恐怖心を抱いていたことは、はっきりと覚えている。\r\n翌日、抜け殻のような状態で筆を執り、何枚もの反省文を書いた。\r\n\r\nそれから7日間、師匠とは一言も話さずに過ごす。\r\n寝坊しても叱られなかった日は、逆に怖くなってさらに長い反省文を書いた。\r\n8日目の朝。\r\n扉を開けると、そこには師匠が立っていた。\r\n――ああ、許してくださったのですね。\r\n\r\nけれど、それは勘違いだったのかもしれない。\r\nある日、師匠は組織の命で極秘任務に派遣された。\r\n彼女が不在の間も、ナノハは黙々と訓練に励んだ。\r\n少しでも師匠の負担を軽くしたい一心で。\r\nナノハは信じていた。\r\nいつものように、今回も数日で帰ってきてくれるはず。\r\n長くても半月ほどだろう、と。\r\nなぜなら、師匠が言っていたように、忍者にとっての家はここだけだからだ。\r\nしかし、いつになっても彼女は帰ってこなかった。\r\n――これは、きっとあの時の罰に違いない。\r\n\r\n出発前、アチキが様子を見に行くと、ナノハは気持ち良さそうに眠っていた。\r\nそこで先日、そっと塀を越えて戻ってきたナノハが、何食わぬ顔で就寝の挨拶をしにきた時の会話を思い出す。\r\n少し厳しくすると、涙目になっていたことが記憶にも新しい。\r\n7日目の朝。\r\n滲んだ文字で、「師匠、行かないでください」と書かれていた。\r\n\r\nもっとも、アチキはとっくに彼女を許していた。",
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"DiscIP.214003.2": "サビ",
"DiscIP.214003.3": "似たもの同士",
"DiscIP.214003.4": "ホタルは無限の宇宙を漂っていた。\r\nそこはとても深く、暗く沈んだ場所。\r\n頭のアホ毛がハテナマークの形になるほど、少女は困惑していた。\r\n「ここ、どこ……?」\r\n遠くに青く光る星が見えた。\r\nその星の名前を知っているわけではない。\r\nけれど、どこか懐かしい感じがした。\r\n「あれは……?」\r\n「――私たちの家だ」\r\nいつだって、カナーチェは疑問に答えてくれる。\r\nどうしてここにいるのかわからないが、家があるのなら帰ればいい。\r\n\r\n背中の『アバランチ』から、眩い光が放たれた。\r\nすると、無数の星艦が現れる。\r\nまるでホタルは、中心に位置する小さな惑星のようだった。\r\nだが、彼女からすれば、新しいおもちゃを手に入れたときの興奮と同じだ。\r\n「ホタルと遊ぶ?」\r\n背後の『アバランチ』から再び無数の光線が放たれると、星艦が次々と光に焼かれていく。\r\n\r\n「じゅんびできた。ホタルのおうち帰る」\r\n『アバランチ』に乗って、ホタルは青い星を目指す。\r\n虚空に浮かぶ小さな姿は、まるで1匹の蛍のようだった。\r\n\r\n「ホタル、起きるんだ」\r\nカナーチェの声でホタルは目を覚ましたが、そこには宇宙も星艦もなかった。\r\nけれど、カナーチェはいる。\r\nついさっきまで宇宙の果てで一緒に行動していた彼女が、いまはリモコンを片手に少し険しい表情を浮かべていた。\r\n「テレビはちゃんと消してから寝るんだ、わかったな?」",
"DiscIP.214004.1": "フル",
"DiscIP.214004.2": "サビ",
"DiscIP.214004.3": "ミルク色の夢",
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"DiscIP.214039.1": "フル",
"DiscIP.214039.2": "サビ",
"DiscIP.214039.3": "夕涼み",
"DiscIP.214039.4": "カリンは少し落ち込んでいた。\r\n祖母の件は無事に解決したものの、それとは別に悩みごとが生まれていたのだ。\r\nそよ風が気持ち良い今日のような晴れた日なら、夏を満喫できたはず。\r\nシアと一緒に浜辺でカニや貝をとったり、シアとサーフィンを楽しんだり、夕暮れには砂浜でシアとバーベキューを楽しみながら夕日を見たり……\r\nだが、その計画は叶わなかった。\r\nなぜなら、浜辺に人が沢山いたからだ。\r\n本来いるはずのない人々が、あまりにも沢山いたのである。\r\n\r\n「わぁ、このサーフボードかっこいい!ねえ、アヤメ!ミドリちゃんの見た目、変えられないかな?このサーフボードみたいに!」\r\n「それはちょっと……いまは改造の予算がないから、大きな依頼を受けるまで待つしか……」\r\n「ふふ、セイナちゃんが興味あるなら、サーフィンを教えてあげてもいいよー?」\r\n「ほんと!?やってみたい!」\r\n「ねえシア、出航した時の話を聞かせてくれない?カーロタウンで一番の航海巡遊者ならおもしろい話くらい知ってるでしょ?」\r\n「ミスティさんは面白い話が、聞きたいの?」\r\n「そう!めちゃくちゃ奇妙で、怖ければ怖いほど最高★」\r\n\r\n……この人たち、いったい、いつになったら帰るんデス!?\r\n木陰に座ったカリンは、人だかりに囲まれているシアを見つめながら、持っていた缶を握り潰していた。\r\nそのとき、カリンのケータイが鳴った。\r\n画面を開くと、そこにはコハクからのメッセージが届いていた。\r\n「どうして一緒に遊ばないの?」\r\nカリンは目を見開いた。\r\n数日前に彼女たちと仕方なく連絡先を交換していたが、本当は余計なつながりなど持ちたくなかった。\r\n来るはずもないと思っていた連絡が届くとは。\r\nしかも、普段はあまり話さないコハクから。\r\nどう返事をしようか悩んでいると、二件目が届いた。\r\n「正直に言わないと、相手に気持ちは伝わらないよ」\r\n\r\n冷たい飲み物が売られている屋台の横に、コハクは立っていた。\r\nどうやら、自分の一挙一動を観察していたらしい。\r\n\r\nカリンは勢いよく立ち上がると、ぷりぷり怒りながらコハクの元に駆け寄り、目を見据えて言い放った。\r\n「なんであたしのこと見てるんデス?」\r\nコハクの瞳には驚き、動揺、戸惑いが浮かび上がり、頬がじわじわと赤く染まっていくのが見えた。\r\n「それ、どういう意味……?」\r\nコハクの返答に、カリンのほうもどうしていいかわからなくなり、太陽の熱もあってかますます顔が熱くなっていった。\r\n\r\n「コハクちゃん、カリンちゃん?なん話してるの?あれ?ふたりの顔……スイカジュースみたいに真っ赤だよ?」\r\n「……もう行く」\r\nそう言い残すと、コハクは慌てて走り去ってしまった。\r\n「ちょっと!さっきのはどういう意味デスか……!」\r\nカリンの呼びかけに返事はなく、カリンはただコハクの背中を見つめ続けた。\r\nその背後に、危険が忍び寄っているとも知らずに。\r\n「ひゃあ——み、耳が!触るなデス!!」\r\n「やっと触れた、最高ー!ずっと触ってみたかったんだ……アヤメも触ってみなよ!」\r\n「セイナ、それはさすがに……」\r\n「本当にだめデス!?なんで触っていいと思ったんデスか!?」\r\n必死にもがくカリンだが、セイナの力のほうがはるかに強い。\r\n抗えないカリンは、ついに胸の奥にしまっていた言葉を叫んでしまった。\r\n「お姉ちゃん!早く、早く助けてください!!それから、ほかの人とばっかりじゃなくて、あたしとも遊んでほしいデス!」",
"DiscIP.214039.4": "カリンは少し落ち込んでいた。\r\n祖母の件は無事に解決したものの、それとは別に悩みごとが生まれていたのだ。\r\nそよ風が気持ち良い今日のような晴れた日なら、夏を満喫できたはず。\r\nシアと一緒に浜辺でカニや貝をとったり、シアとサーフィンを楽しんだり、夕暮れには砂浜でシアとバーベキューを楽しみながら夕日を見たり……\r\nだが、その計画は叶わなかった。\r\nなぜなら、浜辺に人が沢山いたからだ。\r\n本来いるはずのない人々が、あまりにも沢山いたのである。\r\n\r\n「わぁ、このサーフボードかっこいい!ねえ、アヤメ!ミドリちゃんの見た目、変えられないかな?このサーフボードみたいに!」\r\n「それはちょっと……いまは改造の予算がないから、大きな依頼を受けるまで待つしか……」\r\n「ふふ、セイナちゃんが興味あるなら、サーフィンを教えてあげてもいいよー?」\r\n「ほんと!?やってみたい!」\r\n「ねえシア、出航した時の話を聞かせてくれない?カーロタウンで一番の航海巡遊者ならおもしろい話くらい知ってるでしょ?」\r\n「ミスティさんは面白い話が、聞きたいの?」\r\n「そう!めちゃくちゃ奇妙で、怖ければ怖いほど最高★」\r\n\r\n……この人たち、いったい、いつになったら帰るんデス!?\r\n木陰に座ったカリンは、人だかりに囲まれているシアを見つめながら、持っていた缶を握り潰していた。\r\nそのとき、カリンのケータイが鳴った。\r\n画面を開くと、そこにはコハクからのメッセージが届いていた。\r\n「どうして一緒に遊ばないの?」\r\nカリンは目を見開いた。\r\n数日前に彼女たちと仕方なく連絡先を交換していたが、本当は余計なつながりなど持ちたくなかった。\r\n来るはずもないと思っていた連絡が届くとは。\r\nしかも、普段はあまり話さないコハクから。\r\nどう返事をしようか悩んでいると、二件目が届いた。\r\n「正直に言わないと、相手に気持ちは伝わらないよ」\r\n\r\n冷たい飲み物が売られている屋台の横に、コハクは立っていた。\r\nどうやら、自分の一挙一動を観察していたらしい。\r\n\r\nカリンは勢いよく立ち上がると、ぷりぷり怒りながらコハクの元に駆け寄り、目を見据えて言い放った。\r\n「なんであたしのこと見てるんデス?」\r\nコハクの瞳には驚き、動揺、戸惑いが浮かび上がり、頬がじわじわと赤く染まっていくのが見えた。\r\n「それ、どういう意味……?」\r\nコハクの返答に、カリンのほうもどうしていいかわからなくなり、太陽の熱もあってかますます顔が熱くなっていった。\r\n\r\n「コハクちゃん、カリンちゃん?なん話してるの?あれ?ふたりの顔……スイカジュースみたいに真っ赤だよ?」\r\n「……もう行く」\r\nそう言い残すと、コハクは慌てて走り去ってしまった。\r\n「ちょっと!さっきのはどういう意味デスか……!」\r\nカリンの呼びかけに返事はなく、カリンはただコハクの背中を見つめ続けた。\r\nその背後に、危険が忍び寄っているとも知らずに。\r\n「ひゃあ——み、耳が!触るなデス!!」\r\n「やっと触れた、最高ー!ずっと触ってみたかったんだ……アヤメも触ってみなよ!」\r\n「セイナ、それはさすがに……」\r\n「本当にだめデス!?なんで触っていいと思ったんデスか!?」\r\n必死にもがくカリンだが、セイナの力のほうがはるかに強い。\r\n抗えないカリンは、ついに胸の奥にしまっていた言葉を叫んでしまった。\r\n「お姉ちゃん!早く、早く助けてください!!それから、ほかの人とばっかりじゃなくて、あたしとも遊んでほしいデス!」",
"DiscIP.214040.1": "フル",
"DiscIP.214040.2": "サビ",
"DiscIP.214040.3": "迷いを断つ拳",
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"DiscIP.214050.1": "フル",
"DiscIP.214050.2": "サビ",
"DiscIP.214050.3": "夜宴に踊る影",
"DiscIP.214050.4": "その晩餐会は、円満に幕を下ろそうとしていた。\r\n交わされるグラスの底にどれほどの思惑が渦巻いていようと、振る舞われるケーキにどれほどの悪意が隠されていようと、終始和やかな空気が会場を包み込んでいた。\r\n少なくとも、表向きは。\r\n\r\n――バンッ。\r\n\r\n突如、鋭い銃声が響き、あたり一面真っ暗な闇に包まれる。\r\n人々は悲鳴を上げ、不安げにあたりを見回していたが、やがて、示し合わせたかのように視線が窓へと集まっていった。\r\n\r\n一筋の月明かりが、窓から会場に差し込む。\r\n明かりの中を、しなやかで引き締まった影が躍動する。\r\nなびく長い髪、ふさふさとした尻尾、そして――特徴的なクナイ。\r\nその影の主に、心当たりがあった。\r\nしかし口には出さず、彼女の『悪戯』がどんな結末を迎えるのか黙って見守ることにした。\r\n\r\nやがて影は急激に膨れ上がり、光を完全に覆い隠した。\r\n会場が再び暗闇に包まれる。\r\n直後、ガラスが砕け散る音が鳴り響き、暗闇の中でいくつもの悲鳴があがった。\r\n冷たい秋の夜風が吹き込み、背筋をぞくりとさせる。\r\n\r\nシャンデリアが何度か明滅し、再び会場に明かりが戻った。\r\nさざなみのように騒ぎが収まっていくと、人々は互いの無事を確かめ合い、先ほどけたたましい音がした方へと足を向ける。\r\n不思議なことに、窓ガラスは無傷で、鍵もしっかりと掛けられていた。\r\nただ一つだけ、おかしなもの――一通の封筒が、窓枠に残されていた。\r\n\r\n群衆の一人が封筒を拾い上げ、おそるおそる中を開く。その内容が、会場の新たな話の種となっていく。\r\n何が書かれているのか気にならないでもなかったが、その輪から離れ、周囲に視線を巡らせて探し物を探す。\r\n\r\n――やがて、上階へ続く螺旋階段に目当てのものを見つけた。\r\n \r\n蒼き衣を身にまとい、和傘をくるりと回す白髪のメイド。\r\n彼女はあなたと目が合うと、人差し指を唇に当ててふわりと微笑んだ。\r\nそして優雅に身を翻すと、さらに上階の暗がりへと、音もなく姿を消していった。\r\n\r\n「このまま何事もなく終わるなんて、ちぃと退屈でありんすなあ」\r\n\r\n彼女のそんな声が聞こえた気がした。\r\nどうやら『悪戯』はまだ始まったばかりらしい。"
"DiscIP.214050.4": "その晩餐会は、円満に幕を下ろそうとしていた。\r\n交わされるグラスの底にどれほどの思惑が渦巻いていようと、振る舞われるケーキにどれほどの悪意が隠されていようと、終始和やかな空気が会場を包み込んでいた。\r\n少なくとも、表向きは。\r\n\r\n――バンッ。\r\n\r\n突如、鋭い銃声が響き、あたり一面真っ暗な闇に包まれる。\r\n人々は悲鳴を上げ、不安げにあたりを見回していたが、やがて、示し合わせたかのように視線が窓へと集まっていった。\r\n\r\n一筋の月明かりが、窓から会場に差し込む。\r\n明かりの中を、しなやかで引き締まった影が躍動する。\r\nなびく長い髪、ふさふさとした尻尾、そして――特徴的なクナイ。\r\nその影の主に、心当たりがあった。\r\nしかし口には出さず、彼女の『悪戯』がどんな結末を迎えるのか黙って見守ることにした。\r\n\r\nやがて影は急激に膨れ上がり、光を完全に覆い隠した。\r\n会場が再び暗闇に包まれる。\r\n直後、ガラスが砕け散る音が鳴り響き、暗闇の中でいくつもの悲鳴があがった。\r\n冷たい秋の夜風が吹き込み、背筋をぞくりとさせる。\r\n\r\nシャンデリアが何度か明滅し、再び会場に明かりが戻った。\r\nさざなみのように騒ぎが収まっていくと、人々は互いの無事を確かめ合い、先ほどけたたましい音がした方へと足を向ける。\r\n不思議なことに、窓ガラスは無傷で、鍵もしっかりと掛けられていた。\r\nただ一つだけ、おかしなもの――一通の封筒が、窓枠に残されていた。\r\n\r\n群衆の一人が封筒を拾い上げ、おそるおそる中を開く。その内容が、会場の新たな話の種となっていく。\r\n何が書かれているのか気にならないでもなかったが、その輪から離れ、周囲に視線を巡らせて探し物を探す。\r\n\r\n――やがて、上階へ続く螺旋階段に目当てのものを見つけた。\r\n \r\n蒼き衣を身にまとい、和傘をくるりと回す白髪のメイド。\r\n彼女はあなたと目が合うと、人差し指を唇に当ててふわりと微笑んだ。\r\nそして優雅に身を翻すと、さらに上階の暗がりへと、音もなく姿を消していった。\r\n\r\n「このまま何事もなく終わるなんて、ちぃと退屈でありんすなあ」\r\n\r\n彼女のそんな声が聞こえた気がした。\r\nどうやら『悪戯』はまだ始まったばかりらしい。",
"DiscIP.214051.1": "フル",
"DiscIP.214051.2": "サビ",
"DiscIP.214051.3": "惹かれ合う星",
"DiscIP.214051.4": "「センセー、センセー」\r\n裾を引かれたカナーチェが視線を落とすと、ぺたんと床に腰をおろしたホタルがぼんやりと天井を見上げている。\r\nホタルの視線の先には、満天の星空が広がっていた。\r\n天井から吊り下げられた、作り物の星空ではあるが、ホタルにとっては本物の星と相違ない、立派な星なのだろう。\r\n「どうしたんだ?」\r\n「お星さま、どこから来て、どこ行くの?」\r\nホタルの唐突な問いに、カナーチェは戸惑う。\r\n問いの意図を測りかねるというのもあったが、なにより、ホタルはそんなことを聞いてくる子ではないというのが大きかった。\r\n「お星さま、ときどき、ビューンって飛んでく」\r\nカナーチェが答えられずにいると、ホタルが言葉を重ねた。\r\nそういうことか、とカナーチェは落ち着きを取り戻す。\r\nホタルの問いは、至極子どもらしいものだ。\r\n「それは、流れ星だね。決まった道をぐるぐる回っているものもあれば、私たちが住む星に降ってくるようなものもあったりする」\r\n「へー」\r\nカナーチェの言葉に、ホタルは考え込むように首をかしげる。\r\n「じゃあ、他のお星さまは?」\r\n「他の星?」\r\n「うん、動かないお星さま」\r\n「動かない星は……そうだな。動いていないように見えて、実は大きなお星さまを中心にぐるぐる回っていたりするんだ」\r\n細かく説明していくとキリがないから、カナーチェはとりあえずそれだけ伝えた。ホタルがもっと知りたがったら、そのときは詳しく話してあげればいい。\r\n「じゃあお星さま、みんな動いてる?」\r\n「それは……きっとそうだと思う」\r\nカナーチェの言葉に、ホタルは答えない。\r\n代わりに、食い入るように、天井に吊るされた星の中で一番大きなものを見つめている。\r\nホタルの想像のなかでは、作り物の星たちが、本物の星よりもきらびやかに、そして目まぐるしく動いているのかもしれない。\r\n\r\nそう思うと、カナーチェは胸の奥が少しだけ温かくなった。\r\nホタルが子どもらしく、ごくごく普通の、温かな想像をしてくれることがなによりもうれしい。\r\n\r\nカナーチェは微笑み、あらためてホタルを見つめた。\r\n\r\nホタルの心が、きれいなもので満たされますように。\r\nそして自分が、わずかでもその助けとなれますように。\r\n惹かれ合う星々のように、そんなホタルをずっとそばで見守れますように。\r\n\r\nそんなことを、天井の星々に願わずにはいられなかった。",
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